★今日の課題★
運転免許への旧姓(旧氏)併記の手続き
運転免許更新に行く前に要確認
運転免許証は身分証明書として非常に優れていますが、従来は現在の姓しか記載されず、旧姓を名乗りたいときに不便でした。
2019年12月、旧姓が併記できる免許証の発行が始まりました。
時間と旅費をかけて免許更新に行き、そこで書類不備となっては無駄ばかりです。
旧姓併記を希望する場合、しっかりと書類を持参しないと併記して貰えません。
警察庁: 運転免許証への旧姓併記について
日本経済新聞: 運転免許の旧姓併記 12月から可能に (2019年11月28日)
朝日新聞: 運転免許証に旧姓併記、12月からOKに 裏面なら無料 (2019年11月28日)
総務省の制度に足並み
免許証への『旧姓併記』には、自治体で『旧氏併記』のマイナンバーカードか住民票を取得する必要があります。
『旧氏』とは、いわゆる旧姓ではありますが、単に旧姓が書いてあるということでは免許証の手続きは進みません。
詳細は後述します。
併記の方法は2つ
旧姓併記の方法には2通りあります。
1つは免許証の裏側に記載して公印を押してもらう方法です。
もう1つは免許証を再発行する方法です。
再発行を受けると、表面に旧姓が記載されることになります。
身分証明書として、それっぽくなりますが、法律的にはどちらも同じ効果があります。
免許証の再交付手続きには2,250円かかります。
手続きに難あり!?
住民票orマイナンバーカード
警察庁や都道府県警のホームページを見ると下図のような案内がPDFで表示されます。
『以下のいずれかの書類をお持ちの上、お近くの運転免許センター等にお越しください』と書いてあります。
その持参物とは
○旧姓が記載された住民票
○旧姓が記載されたマイナンバーカード
と記載されています。
ここに、落とし穴がありました。
旧姓は併記されている
マイナンバーカードを持っている人が、姓変更すると下図のように特記事項の記載欄に新しい姓名が記載されます。
すなわち、元の氏名欄には旧姓が記載され、現在の姓名は特記欄にあることになります。
これで『旧姓が記載されたマイナンバーカード』だと思って免許センターに行くと、書類不備となります。
なぜでしょう?
総務省の定義を反映していない
総務省の下図資料によると『旧氏』という表記はありますが、『旧姓』という表記は1つもありません。
住民票にも『旧氏』という欄はありますが、旧姓という欄はありません。
総務省: 住民票、個人番号カード等への旧氏の記載等について
旧姓は載っているが…
総務省は旧氏と定義しており、旧姓という定義がない。
市民の目で見れば、下図には現在の姓名と旧の姓名の両方が記載されています。
つまり、『旧姓が記載されたマイナンバーカード』であることには間違いありません。
しかしながら、法律上はこのカードでは手続きができないので、いくら警察庁のホームページに『旧姓が記載されたマイナンバーカードと書いてあるではないか!!』と怒っても、手続きは進めて貰えません。
筆者はこの制度の読み違いで半日を無駄遣い、免許センター1往復分の旅費も無駄遣いしました。
住民基本台帳への記載
運転免許証への旧姓(旧氏)の併記を手続きする前にしておかなければならないのは、総務省系の手続きです。
2019年11月5日に施行された住民基本台帳法施行令等の改正法では、戸籍に過去の氏を登録することで旧氏が併記された住民票などを取得できるようになりました。
手続きをしなければ、旧氏は記載されません。
筆者はこれで、無駄な住民票を発行しゴミ箱行きになりました。300円の損害です。
市区町村役場へ
手続きは役場で行います。支所などではできない事もあるので、お住いの自治体に問合せしましょう。
必要な物は『戸籍謄本』です。
戸籍謄本は役場の市民課などで発行できると思いますが、窓口に行って『旧姓併記したい』旨を伝えると、戸籍謄本の発行手続きと並行して、旧姓併記の手続きも進めて貰えると思います。
筆者の行った窓口ではマイナンバーカードの旧氏併記も同時に手続きできました。
1.旧氏の記載された戸籍謄本発行手続き
2.旧氏併記のための請求手続き
3.マイナンバーカードへの旧氏併記手続き
戸籍謄本に旧氏が記載されていない人は、旧氏(旧姓)併記の手続きはできませんが、姓変更をしたことがなければ旧姓併記の必要性も無いと思います。
総務省: 住民票、マイナンバーカード等への旧氏の併記について
旧氏併記マイナンバーカード
旧氏併記のマイナンバーカードは下図のような物になります。
旧姓と現姓名は既に記載がありましたが、改めてこの人の旧氏は『羽柴です』ということが表記されています。
これで法律上、併記する旧氏が羽柴であることが明確になりました。
警察官は誠実
免許センターに行って、書類不備ではねられる。法律で定められているので準備して来ない国民が悪いという事は変えようがありません。
しかしながら、警察のホームページを見て、そこに書いてあるとおりの準備をして来たにも関わらず、官報などをしっかり読みなさいという指導をするのであれば、その旨も記載しておいて欲しかったなというのが国民の一人の声。
ただし、免許センターに詰めている警察官は誠実でした。
ホームページを見て、これでは誤解も生まれるだろうということで、すぐに本部に改善を要求してくれました。
一方で窓口業務を請け負っている交通安全協会は不誠実と感じました。
最初は『ホームページに記載されています』と言われ、それがわかりづらいという事を警察官から説明があっても『警察が悪い』とのことでした。窓口に警察官は居らず、受託している安全協会が責任転嫁の話しかしないのは、なんとも不誠実さを感じました。
警察も気づいていた!?
警察庁のウェブサイトと、都道府県警のウェブサイトで配信されているPDFファイルが同じかと思っていましたが、今回の一件で違いに気づきました。
中段下のピンクの枠内の『旧姓が記載された住民票』という項目に『旧氏欄に記載されたものに限る』という文言が足されていました。
警察庁の物にはこの文言が入っていません。
わざわざ書き足したのであれば、やはり混乱があったのではないかと思います。
マイナンバーにも注記を!
わざわざ住民票のことについては『旧氏欄に記載されたものに限る』と書いておきながらマイナンバーカードには注記がないので、旧姓は載っているが旧氏が載っていないカードでも大丈夫だと思ってしまう人も少なからずいると思います。
民業としてのサービスであれば、来客した人が消費をせずに退店することは避けたいので、間違いが無いようにアナウンスすると思います。
大事な1日、貴重な旅費を、無駄にならないように周知して頂ければと思います。
バリデーション管理 初見で良いのか?
免許センターの窓口でマイナンバーカードを差し出したとき、窓口の方々が確認していた回覧板のような物には文字だけで説明がありました。
住民票もマイナンバーカードも、旧氏併記の物がどのように記載されていると本物なのか、知らないと言います。
2000円札が発行された日、知り合いの商売人たちは『偽札を出されてもわからないので、受取れない』と言ってしばらくの間は2千円札を取扱っていませんでした。
交通安全協会は『すべては警察のチェック』とのこと
マイナンバーカードを見た事がないという方々が、窓口でマイナンバーカードの確認作業を行います。
免許証を発行する警察では、マイナンバーカードを見ることはありません。
しかしながら、窓口業務を請け負っている交通安全協会の所長に『もし偽物があっても気づかないのでは?』と聞きましたが、『すべては警察がチェックすること』と言って、安全対策をするという感じではなく、警察の責任にするような言いぶりでした。
免許証は身分証明書として使えるので、旧姓と称して他人になりすますことも出来なくはないと思います。
同世代であれば同じ名前の人も少なくないので、生年月日が近ければ免許証を見て、疑われる事無く手続きが進みそうです。
都道府県別の対応
表現はまちまち
各都道府県の2019年12月25日現在の表記方法の違いを比較します。
制度は12月1日から始まったので、それ以前から掲載されていたと思われますが、12月1日以降に更新された物が散見されました。
警察庁
おそらく全国の雛型を作ったであろう警察庁の物です。
『旧氏』という部分には触れられていません。
PDFの作成日は2019年11月26日になっています。
北海道
北海道では『旧姓が取消線で削除されているものは不可』とされていました。
ただし、住民票やマイナンバーカードに取消線が使われる事があるのかが疑問です。
青森県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
最新のお知らせが2019年10月25日になっていたので、更新待ちかもしれません。
岩手県
『免許証に旧姓を併記することができます。(R1.12.1より) ご希望の方は各運転免許センター又は自動車運転免許試験場等へお問い合わせください。』とだけ記載がありますので、問い合わせると教えてくれるようです。
宮城県
宮城県の場合は『旧姓』と『旧氏』の両方の表記があります。
旧氏という認識があることが示されていますが、一方で旧姓でも手続きができてしまいそうにも見えます。
兵庫県警と同じく、住民票は旧氏欄のことが述べられていますが、マイナンバーでは触れられていません。
PDFファイルは2019年12月19日に更新された物が掲載されていました。
秋田県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
山形県
PDFファイルは無く『旧姓記載の住民票又は旧姓記載のマイナンバーカード(コピー不可)』という記載がありました。
やはり『旧姓』であって『旧氏』ではなかったです。
福島県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
茨城県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
栃木県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
群馬県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
埼玉県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
千葉県
千葉県では文字として『なお、旧姓表記を希望される方は、旧姓表記のある住民票または旧姓表記のある個人番号カードをお持ちください。(戸籍謄(抄)本は不可)』というものは見つけられました。
これだけだと、住民票の旧氏表記制度を知らなければ、理解が難しそうです。
東京都
旧姓が表記できるようになったページとは別に、手続き関連のページがありました。
そこでは『旧姓の表記をする方は、旧姓が記載された住民票、又は旧姓が記載されたマイナンバーカード(確認)』という表記がありましたが、『旧氏』には言及されていませんでした。
警視庁: 運転免許証の旧姓表記について
警視庁: 記載事項変更
警視庁: 遺失、盗難、汚損、破損、表示内容の変更による再交付手続
神奈川県
非常にわかりやすく書かれています。
これならば、間違えて行くことも減りそうな気がします。
もう少し言えば、11月5日から制度改正があったので市役所での手続きが必要である旨まで書いてあったら、最高に良いかと思います。
新潟県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
富山県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
石川県
オリジナルのPDFファイルを配信している石川県警察です。PDFは11月27日に作成されているので、制度開始前に内製したようです。
必要書類については『旧姓が記載された住民票又はマイナンバーカード』とされているので、やはり『旧氏』とはどこにもありません。
福井県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
山梨県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
長野県
『旧氏』については明示されていません。
住民票については、市町村に問い合わせましょうと促す文言が入っています。
岐阜県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
静岡県
警察庁の発行している資料そのまま、発行元の名称もそのままでした。
静岡県警察: 運転免許証再交付申請等の改正(令和元年12月1日施行)
愛知県
愛知県警では『旧姓を併記するためには、旧姓が併記された住民票若しくは旧姓が併記されたマイナンバーカードの提示が必要です。』という表記にとどまっています。
三重県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
滋賀県
『旧氏』ついては表記がありませんでした。
京都府
サイト内に旧姓記載に関する記述はありましたが『旧氏』については記載がありませんでした。
大阪府
『旧氏』について書かれている珍しいサイトです。
大阪府警察: 令和元年12月1日から、御希望に応じて運転免許証に旧姓を併記できるようになりました。
兵庫県
住民票には『旧氏』ということが掛かれていますが、マイナンバーについては触れられていない資料です。
奈良県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
奈良県警察: 運転免許証への旧姓記載について
奈良県警察: 運転免許証記載事項変更手続き案内
和歌山県
警察庁とほぼ同じ内容として『現在の本国籍及び旧姓が記載された住民票の写し』『旧姓が記載されたマイナンバーカード』といった記述がみられました。
鳥取県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓が記載された住民票又は旧姓が記載された個人番号カード』といった記述がみられました。
島根県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓記載を希望される方は、旧姓が記載された住民票の写し又は個人番号カードの提示が必要です』といった記述がみられました。
岡山県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓が併記された住民票(コピー不可)又は旧姓が併記された個人番号カード』といった記述がみられました。
広島県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓の記載された住民票の写し又は旧姓の記載された個人番号カード(マイナンバーカード)』といった記述がみられました。
山口県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
PDFファイルは11月27日に作成されており、県警の中では一番早い日付のようです。
徳島県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
香川県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
愛媛県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
高知県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
福岡県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
佐賀県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
長崎県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓が併記された住民票又はマイナンバーカード(マイナンバー通知書は不可)の持参が必要です』といった記述がみられました。
熊本県
ほぼ、警察庁の発行している資料と同じでした。
大分県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓が併記された住民票もしくはマイナンバーカードの提示が必要です』といった記述がみられました。
宮崎県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓が記載された住民票の写し又は旧姓が記載された個人番号カードを提示』といった記述がみられました。
鹿児島県
検索では旧姓に関する表記は見つかりませんでした。
沖縄県
警察庁とほぼ同じ内容として『旧姓を記載したい方については、旧姓が記載されている住民票又は旧氏が記載されているマイナンバー(個人番号)カードを持参して下さい』といった記述がみられました。
今日の解決策は『制度をしっかり理解してから行く』でした。
行政の配布資料も要約されているので、自身の理解が正しいとは限らないといくことがよくわかりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。