カテゴリー
BCP・災害対策 医工連携・事業化推進 生活・DIY

酸素濃縮器(自助@自宅療養) ~今日の課題~

★今日の課題★
医療崩壊が現実になったとき、自宅療養を強いられる患者が増えると思いますが、医療サービスが受けられない中で生き延びるための手段が必要だと思い、酸素濃縮器の調達を検討しました。




酸素濃縮器とは?

 大気(空気)は窒素が約8割、酸素が約2割です。

 ここから窒素を減らすと酸素の割合が増えます。

 酸素濃縮器とは、大気から窒素を取り除いて酸素の濃度を高くしたガスを製造する装置です。

 100%の純酸素を製造する装置ではありません。
 窒素を全部除去するのは大変ですし、窒素以外の微量ガスもありますので、100%の酸素はつくりません。

 100%酸素が必要な場合は、ガス屋さんから酸素ボンベを調達します。




酸素濃縮器のメリット

 酸素濃度100%が作れないのに酸素濃縮器が使われるのはなぜでしょうか。

 最大のメリットは原材料がタダであり、無尽蔵である事だと考えられます。

 空気と電源さえあれば、どこでも濃度の高い酸素を供給できます。

 維持費がかからないことも重要ですが、酸素ボンベ交換の手間が省けることや、災害等で酸素ボンベの供給が危うくなっても自前で酸素が調達できる利点があります。

 小型家電製品のような物なので、比較的色々な場所へ持ち込めるのも利点の1つになります。




酸素療法

 酸素療法とは、身体が求める酸素量が十分に供給されない状態の人が受ける治療法です。

 肺がダメージを受けている状態だと、いつもどおり呼吸をしても血液に酸素を送り込みづらくなってしまい、結果として身体は苦しさを感じます。

 空気を吸っているときの酸素濃度は20.9%、肺の機能が半減したとき、酸素濃度を倍にすれば理論上は正常を保てます。

 酸素マスクを鼻と口に当て、しっかりと呼吸をして弱った呼吸機能の中でも身体に必要な酸素を自発呼吸でまかないます。

 高濃度の酸素を吸っても追い付かないような肺炎になると、人工呼吸器を使います。




酸素欠乏

 病気で無くても酸素が欠乏して危険な状態になる事があります。

 周囲の酸素濃度が低い場合には呼吸が苦しくなりますので、飛行機の座席には酸素マスクが用意されています。

航空機の客席にも酸素マスクが搭載されている

 工事現場で酸欠が起こる事もしばしばあります。
 消防設備のCO2誤発射による事故はたびたび発生しており、CO2を充満させて酸素濃度を下げて消火する仕組みですので、そこに人が居れば窒息してしまいます。

 地下の共同溝などで作業する人も酸欠の危険が伴うため、地上からダクトを通じて新鮮な空気を送り込んでいますが、万一装置が停止した場合には危険です。

[Link] 労働者健康安全機構(JOHAS): 酸素欠乏症とその対策




在宅酸素療法

 病院で酸素療法が必要な場合は、医療用の酸素供給環境が整備されているので純酸素を使って治療しますが、在宅の場合は酸素濃縮器が使われる場合が多くあります。

 薬機法では酸素濃縮器の目的や効果を『周囲の空気から窒素又は酸素を分離することにより、酸素分圧の高い空気を作り出し、患者に供給すること。』となっています。

 すなわち、治療目的に酸素を濃縮する装置は、医療機器であるという事になります。

 医療機器なので薬事申請が必要ですし、その申請により認証されていない機器を医療用の酸素濃縮器として販売する訳にはいきません。

[Link] PMDA: 能動型機器接続用酸素濃縮器

[Link] PMDA: 能動型機器接続用酸素濃縮器 認証基準




市販の酸素濃縮器

 医療機器を製造するには医療機器製造業の登録、販売元になるには医療機器製造販売業の許可、そして販売するには医療機器販売業許可が必要になります。

 医療機器は国民を危険にさらさないように規制の中で取引されますので、一般に手に入る酸素濃縮器は医療機器では無いと考えて良いと思います。

 ネット通販で見ると酸素カプセルなど業務用の物は数十万円で取引されています。
 業務用ではない機種を探すと楽天市場Yahoo!ショッピングに多数出品があります。




比較検討

 検索をしてみて、気になる機種がいくつかあったのでピックアップします。

 医療機器とほぼ同じというshenpixは値段は高いですが、ネット通販の機種の中では確実性の高い、失敗しない機種だと思います。もし、いま自分が患者で、酸素ボンベも酸素濃縮器も保健所から支給できないと言われたら、これを買いたいと思います。

 その半値くらい、10万円チョットの機種もあります。これも悪く無さそうです。ただし、10万円で失敗したらどうしようかなと思うと、20万円を出しても良いかなぁと悩みます。

 しかし、今回は自助目的で使わないかもしれないので、3万円台あたりが妥当なのかなと思いました。


shenpix『高濃度酸素サーバー』

 医療機器に匹敵するレベルの酸素濃縮器なのではないかと思います。
 このメーカーでは医療機器としての酸素濃縮器を扱っており、その医療機器から少し機能を削って提供されているようです。
 医療機器の認証基準にも示されているJIS規格を取得されているので、この装置が市販品の中で一番良いと思います。

 流量1L/minならば95.5%まで濃度を上げられるとしています。5L/minで87%が本当ならば、相当に良い機種だと思います。

 非医療機器が19万円、最上位機種が26万円くらいです。
 難点は、納期です。人気過ぎて、手に入りづらいです。
 広告で『脳、活性化できます。』と謳ってしまっているので医療機器の広告規制に引っ掛かってしまわないか心配しています。


M1O2-Hybrid(エムワンオーツーハイブリッド)

 こちらは10万円超の家庭用酸素濃縮器です。
 酸素流量2L/minなら90%まで酸素濃度が上げられるとしています。6L/minで45%なので、ある程度の息苦しさには対応できるかもしれません。

 位置づけとしては『酸素バー』のように癒しを求めて酸素を欲する人向けの装置です。
 5千円オフクーポンとかが出ていますが、品物が入荷待ちなのでいつ手に入るかはわかりません。

 最上位機種は最大流量13L/minです。この機種は流量1Lであれば酸素濃度93%まで上げられます。


現実路線の3万円台

 下の4つの画像はどれも同じ機種だと思いますが、販売店が違います。値段はだいたい同じ、どこかが下げれば全体が下がるという感じの価格競争品です。

 公称値が正確であれば93%の酸素を1L/minで製造することができます。50%で4L、30%で7Lを毎分製造するとの事です。




酸素ボンベではダメですか?

 酸素濃縮器を買わずに、酸素ボンベを自宅療養の2週間分備蓄してはどうなのか、という考えもあります。

 まず、医療用酸素ですが容易に入手できません。

 中身は酸素ですので、おそらく溶接などで使われる工業用酸素でも『生きるか死ぬか』という状況であれば使っても良いのではないかと思います。

 物流が確保できている状態で、医療用として使う場合には医療用酸素ボンベに充填された、薬機法上の製造業者が充填した酸素でなければなりません。

 もし備蓄するとなると、どれだけ必要でしょうか。
 1500L充填できるガスボンベがありますが、1分に2L流せば750分、12.5時間で無くなります。14日間・336時間となると27本です。
 1分に2Lは相当に微量な酸素という感じですので、症状が少しでも悪化すれば倍量となるので50本以上の備蓄が必要です。

[Link] 厚生労働省: 平成23年東北地方太平洋沖地震における工業用ガスボンベを医療用ガスボンベとして使用することについて(医療機関及び製造販売業者等への周知依頼), 平成23年3月14日




自助のための酸素濃縮器

 今回の想定は医療崩壊が起こって無症状と軽症は有無を言わさず自宅療養から始まり、調整が付けば宿泊療養もできるという想定です。
 既に中等症や重症で病床は満床状態で、自宅に居て症状が悪化しはじめても入院はおろか、診察すら受けられないという最悪な状況を想定しています。

 こうなるとセルフメディケーション、自分でどうにかしないと生き延びられないという状況です。

 肺炎治療にはお薬が必要なのでそこは医科の介入を待ちますが、とりあえずそれまでに死んでしまわないように酸素を吸ってマラソン中のような呼吸状態から脱したいと考えています。

 そうなるとやはり酸素ボンベより酸素濃縮器が良さそうです。

 予算も限られているので、3万円台の酸素濃縮器を買って、デルタ型への感染に備えることにしました。




中国製の3.5万円くらいの品

 中国のネット通販『京東』(JD.COM)で調べると、日本のネット検索でもヒットしていた商品が出てきました。

 600~800元なので、1元17円で計算すると1万円~1.5万円が現地の相場のようです。
 このまま輸入できれば、日本で買う価格の3分の1ですが、取引方法がわからないので日本のネット通販で買う事にします。


 予算を決めると商品はだいたい絞られてしまったので、あとはショップの良し悪しで選びました。

 レビューを見ると小原商事というショップが良さそうでしたのでそちらで買いました。今回は変圧器とCO2モニター付きを選びました。

 そして、お荷物が届きました。注文してから8日目です。私としては不満はない日数です。
 配達時に不在にしていたので不在票が入っていました。玄関に宅配ボックスがあるのですが、入れてもらえず残念でしたが、早く再配達してくれました。


 開封してみると、中身はこんな感じです。
 本体は誰が見てもわかりますが、あとのアクセサリが重要な物とオマケ的な物が混在しています。


 背面を見るとこのようになっています。

 電源コネクタ部ですが、何か色々な線が使えてしまいそうで怖いです。
 定格は200Vとの事ですが、本体に表示はありません。100Vを差し込んでも壊れはしないと思いますので、たぶん安全だと思います。

 今回は変圧器付きを頼んだので、200Vに変圧(昇圧)して使います。


 基本的には中国人のために中国メーカーが作ったという物を輸入している様子なので、何もかも中国人用です。日本語も英語も出てきません。

 最初の起動から中国語です。


 中国語ばかりですが、雰囲気で使えました。

 流量は1L/min~7L/minまで調整ができます。

 タイマーは30分~4時間まで30分刻みで設定できます。

 マイナスイオン機能が搭載されています。

 操作時のメッセージ音を消す機能があります。




治療に使えるのか?

 これは治療用ではないので、治療には使ってはいけません。
 というのが法律上の建前です。

 今回は医療機器としての酸素濃縮器や酸素ボンベが提供されずに息苦しい時間を過ごす事になったときの、生きるための緊急回避的な考え方で酸素濃縮器を見てみます。

 まず、一般的な事として臨床で用いられる鼻カニュラやマスクによる酸素療法の吸入酸素濃度の目安を見てみます。
 下表は臨床ですので、酸素流量は100%酸素の流量を指します。酸素濃縮器ではありません。

酸素流量鼻カニュラ簡易
酸素マスク
リザーバ付
酸素マスク
[L/min][%][%][%]
124
228
332
436
54040~45
64445~5060
750~5570
855~6080
990
1090~

鼻カニュラ




本機の理論値

 健康な状態であれば1分に10回くらいの呼吸、6秒で1呼吸(サイクル)となります。
 吸気は1秒程で350~500mLくらいを吸いますので、仮に500mL(0.5L)だとすると0.5L/秒、30L/minの速度です。

 この装置は2L/minの設定時に70%の酸素を供給すると言っていますので、理論値で言うと30L/minの内の2L/minが70%、残る28L/minが20.9%の酸素濃度となります。
2L×0.7+28L×0.209=1.4+5.852=7.252L/min
 30L中の7.252Lなので24.17%の酸素濃度を吸っている事になります。

 では6L/minで35%の設定に切り替えるとどうなるのか、計算すると
6L×0.35+24L×0.209=2.1+5.016=7.116L/min
 30L中なので23.72%の酸素を吸っている事になります。

 酸素加の効率で言うと2L/minの設定の方が良い事になります。

 そして、その理論値24.17%とは、臨床使用される鼻カニュラによる酸素療法の『1L/min』と同等になります。
 酸素濃縮器の設定上は2L/minですが、それは工業製品側の数値であって、患者側の数値は1L/minです。

 ただし、注意すべきは製造される酸素が定常流ではない点です。間欠的にプシューっと出てきますので、吸気のタイミングでガスが出ていなければ空気を吸っているのと同じです。

 そこで、リザーバーバッグに酸素濃縮器から吐出されるガスを溜めれば良いかなと思って、試してみました。


 バッグにガスを溜める事はできます。

 2Lのバッグを一杯にしておけば、1回の吸気量0.5L分はまかなえます。

 問題は6秒後に来る次の吸気までに0.5Lを溜められるかです。

 もし、溜められない場合でも、リザーバーバッグに貯めた酸素だけで呼吸するのではなく、部屋の空気も一緒に吸い込めば1回の吸気0.5Lすべてを酸素濃縮器がまかなう必要はなくなります。




ネーザルカニューラ

 とりあえず今回は鼻カニュラの1L/min程度、リザーバーを上手く使えれば2L/minも期待できるかもしれないという程度で考えておくことにします。

 肺が炎症を起こせば酸欠状態になりますが、それが致死的な呼吸苦にならない事を願い、入院先が見つかるまでの数時間は誰かが生き延びられると期待しています。




2台持ちを検討中

 酸素濃縮器1台の能力を追求しても限界があります。

 医療用のハイパワーな物を入手したくても予約待ちで納品がいつになるかわかりません。

 そこで、酸素濃縮器を2台持つ事で、姑息的ですが呼吸を助ける仕事はできるのではないかと考えています。




 今回は、医療崩壊が起こった中での呼吸困難を回避するため、酸素濃縮器を検討し、結局は調達しました。

 以前、カセットガスボンベ式の小型発電機を調達して『いつ使うのか?』と思っていましたが、10年も経たずに役に立ちました。52時間の停電中もエアコンや冷蔵庫が使えて助かりました。

 今回は生命に関わる事ですので、しっかり使えるように、家族のだれもが使えるようにマイマニュアルも整備したいと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

解決

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です