保険調剤薬局は病院やクリニックの『門前』に出店しているものが多くありますが、医療機関が無くても駅前であったり、ポツンと郊外にあったりもします。
薬局の名称は『さくら薬局』『ひまわり薬局』など花の名前や、『みどり薬局』『わかば薬局』など緑色を想像させるものなど色々ありますが、どれも経営者が同じという訳ではありません。
経営者はいったいどのような名前が多いのか、調査してみました。
DBはMekiki.me
今回の調査に使ったデータベース(DB)は、ウェブ上に全国の保険調剤薬局リストを公開しているMekiki.meのDBです。
企業として1位は
保険調剤薬局の厚労省データ上のトップは『ウエルシア薬局株式会社代表取締役松本忠久』です。この名称で1,721軒の登録がありました。
『ウエルシア』では1軒だけ『ウエルシア薬局株式会社松本忠久』というものが『ウエルシア薬局福島鎌田店』で届出されていますが、ウェルシアホールディングスのホームページにも掲載されている店舗なので、おそらく『代表取締役』を付けずに届出ているだけの誤記だと思います。
もう1店舗『ウエルシア薬局香取佐原店』の開設者は『ウエルシア薬局株式会社代表取締役水野秀晴』となっており、もしウエルシア薬局株式会社が1つしか無いのであれば、この水野秀晴さんは2019年に社長を退任していますので、3年以上も昔のままで届出していない店舗があるのかもしれません。
2位はスギ薬局、3位はアイン
2番目に多かった『株式会社スギ薬局代表取締役榊原栄一』ですが、実は『榊』の字が文字化けするので、文字化けする方の字で登録されている1,078軒と、同じく13軒、同じく1軒、そして文字化けしない榊原で登録されている92軒があるので1,184軒が正しい数字だと思います。
3番目に多かった『株式会社アインファーマシーズ代表取締役大石美也』は630軒は、『株式会社アインファーマシーズ』110軒と同じではないかと思われますので740軒が正しい数字だと思います。
4位は事業再生発表
次に多い『クラフト株式会社代表取締役新井勝』(570軒)は『クラフト株式会社』(24軒)と『クラフト株式会社新井勝』(1軒)を足して595軒が1群だと思います。
クラフト株式会社はクラフト本社株式会社のグループで、さくら薬局株式会社も同グループ企業です。
『さくら薬局株式会社代表取締役新井勝』(193軒)も含めると788軒になります。
この数字を見ると株式会社アインファーマシーズの740軒より多いので、店舗数で言えばクラフト(さくら薬局)の方が多いようです。
【参考】Yahoo!ニュース:調剤薬局の「クラフト」、事業再生ADR申請(2022年3月23日)
【参考】東洋経済オンライン:ADR申請「さくら薬局」に吹き荒れる2つの大逆風 調剤報酬改定で大手調剤「受難の時代」が到来(2022年4月20日)
【参考】ダイヤモンドオンライン:「さくら薬局」が破綻で薬剤師動揺、なぜ調剤薬局の倒産が起きているのか(2022年4月24日)
5位以下は僅差
5位は総合メディカル株式会社、6位はクオール株式会社、7位は日本調剤株式会社、8位は株式会社クスリのアオキで、このあたりまで500軒前後です。
総合メディカルとクオールは表記ゆれで10~20軒は増えると思いますが、日本調剤は『社長』が付記されたものが161軒、代表者名が無い物が46軒あるので約700軒になり、おそらくここが実質の5位なのだと思います。
社名に多い文字は?
開設者名に『ドラッグ』が付くのは642軒でした。これだと調剤薬局上位5社がそれぞれ700軒以上なので1社でカバーできる数字になってしまいます。
『薬局』で検索すると15,729軒ありました。スギ薬局だけでも1,000軒を超えますが、店舗名の○○薬局がそのまま株式会社○○薬局となっているものも多いようです。
薬局を英訳した『ファーマシー』は3,721軒でした。
アインファーマシーズがこの内の2割ほどを占めていますが、社名としてファーマシーを付ける法人は少なくないようです。
『メディカル』は3,621軒でファーマシーと同じくらい、社名にカタカナ(英語)が入るのは大企業も中小零細企業も似たようなところかと思います。
カタカナで『ライフ』は428軒、『ヘルス』は671軒、ヘルスケアは577軒でした。
地名では『日本』が1,400軒、『東京』が114軒、『千葉』が196軒、『北海道』が153軒、『札幌』が54軒ということで、人口に比例する訳ではないようです。
ちなみに所在地別では東京都が6,869軒、千葉県は2,577軒、北海道は2,269軒、札幌市は804軒です。
『大麻』と名が付く薬局
北海道には地名に『大麻』が付く場所があるので、薬局名にも大麻が付くケースがあります。
これは江別市の『大麻』(おおあさ)と読むので、大麻草の大麻(たいま)とは違います。
もし、日本で合法大麻が流通するようになれば、検索トップを取れる可能性がありそうです。
日本では『脱法ハーブ』や『合法ハーブ』などという言葉で幻覚や興奮を引き起こす作用がある薬物を含んだ薬草のようなものが白昼堂々と、あるいは闇で取引されていることがあります。
ハーブから薬を連想しやすいのですが、薬局の店舗名に『ハーブ』と付く店舗も少なからずあります。
同じ会社で多店舗展開する中で『ハーブ薬局』の名を使っているケースもあり、おそらくそのエリアでは違和感なく見かけていると思います。
店舗名に薬局がないのは?
今回利用させてもらったデータ(Mekiki.me)では、60,738軒分の薬局情報がありました。
『薬局』が付く店舗は60,342軒、すなわち99.3%の調剤薬局が店舗名に『薬局』を付けていることになります。
レアな薬局を付けない薬局に『合資会社一の秋野総本店』さんがありますが、こちらは店の看板に『秋野総本店薬局』と書いていあるので、届出上で薬局が付いていないというだけだと思います。
この秋野総本店薬局さんは1872年創業、非常に貴重な建物が特徴、札幌の大通公園の近くにあるので観光がてら見に行っても良いのかなと思います。できたら、何か買ってほしいですが薬局なので病気があれば店舗もご利用ください。
薬局なのに『薬局』を付けないのは法律違反ではないのですが、顧客(患者)にわかりやすくするには『薬局』を付けた方が良さそうですし、ネット検索でもヒットしやすくなると思います。
あえて付けていない店舗を検索してみると『くすり』『調剤』『ファーマシー』という名前が付いていることが多いようです。
患者の多くが高齢者、ファーマシーと言われてピンとくるかどうかわかりませんが、下図のように圧倒的な立地、門前の一丁目一番地を陣取ることができれば店舗名ではないかもしれません。
ちなみに下図は国立病院機構の仙台西多賀病院の目の前にある調剤薬局ですが1度訪問したことがあり、非常にアットホームな感じの薬局でした。
店名に『薬局』がない400店
百聞は一見に如かず、検索してみるとなるほどなと思えることもあります。
下記の検索エンジンで出力される結果は、Google Mapともリンクしているので、立地を見ると傾向がわかってくるかもしれません。
おわりに
今回は薬局の名称について調べてみました。
多店舗展開するグループが多くなるのは当然ですが、開業権のある薬剤師が自分の会社を持つとき、英語が入る社名にすることが多いような感触もつかめました。
薬局であるにも関わらず店舗名に薬局をつけないレアな店舗が400軒くらいありましたが、これからはもっと少数派になるのではないかと思います。
高麗堂や保健堂など漢方や健康などから導かれたであろう名称の薬局が、薬局を付けずに新規開業はなさそうなので、レアな店舗さんたちにはこのまま残ってもらいたいなと思いました。