★今日の課題★
感熱ロール紙に印刷ができるサーマルプリンタの選抜
なぜ、いま?
ライフワークとしてソフトウェア開発をしており、最近は社員研修などのイベント時の受付(入退)管理システム『GateKeeper』をリニューアルしてVectorさんにアップロード(アップデート)しました。
そこで思い出したのがサーマルプリンタです。
昔、開発で使っていたので GateKeeper に搭載できないかと思って引っ張り出してきました。
それが、こちらです。
サーマルプリンタとは?
サーマルプリンタとは、感熱紙プリンタです。
熱を加えると変色する用紙を使い、文字や画像などのある部分には熱を加え、そうでない部分には熱を加えないことで、印刷するプリンタです。
レシートの大半がサーマルプリンタで印刷されています。
宅配便伝票などもサーマルプリンタで出力している会社が多くあります。
何をしようとしてるのか?
GateKeeper は入退管理をするシステムなので、入退管理に使う事を想定しています。
飛行機の手荷物検査場をイメージしています。
自動改札機のようなものにカード等をかざすと出て来る搭乗案内のようなものを出す事ができないかと考えています。
GateKeeperでサーマルプリンタを連動させる、というのがしようとしていること、したいと思っていることです。
既有品の課題
画像をご覧いただくとわかると思いますが、ポートがだいぶ旧式のシリアルタイプです。
RS-232Cというシリアルポートですが、Windows XPやWindows 2000の時代には主流でした。
筆者はその頃には研究を始めていたので、RS-232Cの周辺機器がたくさんあります。
自分だけで使うのであればこれでも良いのですが、GateKeeperは多くの方々に使って頂きたいので、現行品で採用されているUSB(universal serial bus)、Bluetooth、LANなどに対応できる必要があると考えています。
とりあえずUSB、ここから始めてみようとおもい現行機種を調べてみました。
レジ定番のセイコー
レジのプリンタといえば、私のイメージではセイコーです。
メーカー名で言うとセイコーインスツル(SII)か、セイコーエプソン(EPSON)の製品をよくみかけます。
セイコーインスツルのラインアップは非常に豊富で、58mm幅のスタンダードなレシートから、112mmのトイレットペーパーみたいな大きな物まで揃えています。
据え置き型とモバイル型があり、宅配便や郵便のスタッフの制服の一部のように、腰からぶら下げているものがモバイル型です。
セイコーインスツル(SII)
MP-B20
質量180g、落下耐性1.5mという身に付けて使うには適した端末です。
レジに据え置いて使う場合には専用クレードルを利用するとUSB給電できて、置いた状態が安定するので両用タイプとも言えます。
用紙幅58mm、印字速度は80mm/secなので速くはないですが、遅くもないと思います。
セイコーインスツル モバイル型感熱式プリンター MP-B20 USB Bluetooth接続 MFi認定 ブラック
USB接続、Bluetooth接続に対応した感熱ロール紙対応のモバイル・サーマル・プリンタです。 AirPay (エアペイ)、Airレジ (エアレジ)、STORES ターミナル (コイニー)、Payment Meister、SaAT ポケレジ、ROYAL GATE (ロイヤルゲート)、スマレジ、ぐるなびPay、pCAT、CAFIS Archなど多様なレジアプリに対応しています。 用紙切断はティアバー(手切り)です。 |
エプソン(EPSON)
TM-P20Ⅱ
SIIのMP-B20と同様に小型堅牢なタイプのモバイル型サーマルプリンタです。
こちらは耐落下性が2.1mです。防水防塵機能も備えています。
接続方法はUSBとBluetoothの両対応型(P202B901M2)と、USBと無線LANの両対応型(P202W911M2)があります。
いずれの機種もNFC搭載です。
バッテリでBluetooth機種なら27時間、無線LAN機種で15時間持続するので、1日の業務には十分に耐え得る容量です。
仮に劣化して7割しか使えないとしてもBTで19時間、LANで10時間半なので1勤務帯は大丈夫、営業時間的にも概ねカバーできる容量だと思います。
SDKを見るとiOSとAndroid用が用意されています。
本体はWindowsにも対応していますがSDKは不明です。プリンタとして認識させることはできるようなので、昔のRS-232Cのときのようにポート設定などは要らないかもしれません。
『シングルチャージャー』というクレードルのような物が付属してくるので『デスクトップモード』に設定すれば常時給電で卓上機として使え、必要なときに持ち歩いてモバイルプリンタとして使えます。
Bluetooth + USB モデル:P202B901M2
無線LAN+ USB モデル:P202W911M2
EPSON モバイル型感熱式プリンター TM-P20Ⅱ
小型軽量と堅牢性で移動業務を支える、耐落下性2.1m、防水防塵を備えたプリンタです。 |
TM-P20
(TM-P20B563)
エプソンのTM-P20IIと似たモデルでTM-P20があります。
こちらはBluetoothとUSBに対応、NFCも搭載、用紙幅58mmという点ではTM-P20IIと同等です。
Apple社のMFiライセンスプログラム認定品であることが特徴の1つです。
TM-P80II
さらに上位の機種があります。
上位になると80mm対応であったり、オートカットができるラベル対応プリンタであったりします。
価格としては、その分だけ高くなります。
上位機種でもラベルには対応してません。
EPSON TM-P20II | EPSON TM-P80II | EPSON TM-P80II | EPSON TM-P80II | |
仕様 | 58mm幅 手動カット | 80mm幅 手動カット | 58mm幅 オートカット | 80mm幅 オートカット |
モデル | Bluetoothモデル | Bluetoothモデル | Bluetoothモデル | Bluetoothモデル |
型番 | P202B901M2 | P802B901M3 | P802B941A2 | P802B921A3 |
価格 (調査時) | 20,900 | 37,301 | 58,673 | 58,014 |
用紙幅 | 58mm | 80mm | 58mm | 80mm |
用紙外径 | 40mm | 51mm | 51mm | 51mm |
印字速度 | 100mm/s | 100mm/s | 100mm/s | 100mm/s |
質量 | 216g | 379g | 513g | 504g |
落下耐性 | 2.1m | 1.9m | 1.5m | 1.5m |
防塵防水 | IP54 | IP54 | IP54 | IP54 |
用紙カット | マニュアル | マニュアル | 自動カット | 自動カット |
ドット構成 dots/line | 384 | 576 | 384 | 576 |
印字密度 | 203dpi | 203dpi | 203dpi | 203dpi |
USB通信 | USB TypeC | USB TypeC | USB TypeC | USB TypeC |
Bluetooth通信 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 |
有線LAN通信 | - | - | - | - |
無線LAN通信 | - | - | - | - |
NFC | NFC | NFC | NFC | NFC |
MTBF | 12万時間 | 12万時間 | 12万時間 | 12万時間 |
ブラザー(brother)
RJ-2035B
重さは215gなのでSIIの機種と大差ありません。
サイズ感は『手のひら』です。
Bluetooth5.0とNFC通信に対応しています。
iPhoneやiPadなどをレジ端末などとして使っている場合には比較的簡単に使い始められると思います。
brother RJ-2035B
コンパクト性を追求した、用紙幅2インチのレシート専用感熱モバイルプリンターです。 重さ215g、身に付けて運びやすい軽さです。 |
和信(WASHIN)
WS-P501A
質量213gなのでSIIやbrotherのモバイルと大差ありません。コンパクトで携帯しやすいレシートプリンターです。
先述の機種の半額以下というのが実勢価格です。
長時間バッテリー搭載、58mm幅、直径40mmのレジロールが収納可能で、外出先で電池切れや紙切れの可能性は低く抑えられています。
印字速度は70mm/secなので普通という感じです。
印字ドット数は203dpiなので高画質とは言い難いです。
インターフェースはUSB、Bluetooth搭載なのでWindowsやAndroidな、Mac(iOS)など多様に対応しています。
バーコードやQRコードの印刷もできます。
POSレジにも対応しているようですが、日本で普及しているシステムの個別対応状況は変化もあるようなのでメーカーにお問い合わせください。
和信 モバイルプリンター WS-P501A
卓上で使う感じの58mm感熱紙プリンターのデザインですが、コンパクトなのでモバイルとしても使えます。 ドライバはWindows、Linux、Android、Mac OSに対応しています。 |
Petural
M220
『感熱ラベルプリンター』という種類になると思いますが、ショップで店員さんが腰からぶら下げて値札を貼っていくようなときに使うモバイルプリンターです。
用紙は80mm幅まで対応しています。
ロームのプリンタヘッドを搭載しているとのことです。
BluetoothとUSB接続に対応、スマホもパソコンも接続できます。
専用のラベルが必要ということで、今回の候補からは外れました。
サーマルプリンタ Petural M220
スマホやパソコンに対応した感熱ラベルライターです。 業務用にも私用にも使えそうな入門機です。 |
M110・M120
前述のM220の旧式や下位機種です。
用紙が50mmまでしか対応していないということで、汎用性の高い58mmも使えないので今回の候補からは外れました。
価格は6,000~6,500円くらいです。
Amazonでレビュー数が100件を超えているので情報は得られやすい商品です。
モバイルプリンタなら….
モバイル型のサーマルプリンタ、幅58mmのロール紙に対応したものというだけで選ぶならば、和信のWS-P501Aが圧倒的に安いです。半額です。
ただし、情報が少ないです。拠点が東京にあるので日本語で普通に対応して貰えそうなので開発者としては問題ないと思いますが、ユーザーさんが何度も問い合わせするのも申し訳ないので迷うところです。
情報量ではEPSONが圧倒的に多いような気がします。さすがインクジェットプリンタでコンシューマー対応もしてきただけのことはあるという感じで、TM-P20だけで13種類のPDFファイルが用意されていました。
Epsonの機種は印字速度も速いですし、ロール紙外径は他製品と同じ40mm、USBはType-Cなので堅牢性もありそうなので、リーズナブルなのはEPSONのTM-P20IIかもしれません。
SII MP-B20 | EPSON TM-P20II | brother RJ-2035B | WASHIN WS-P501A | |
価格 (調査時) | 20,589 | 20,900 | 22,956 | 11,336 |
用紙幅 | 58mm | 58mm | 58mm | 58mm |
用紙外径 | 40mm | 40mm | 30mm | 40mm |
印字速度 | 80mm/s | 100mm/s | 102mm/s | 70mm/s |
質量 | 180g | BT型216g LAN型223g | 215g | 213g |
落下耐性 | 1.5m | 2.1m | 1.8m | |
防塵防水 | IP54 | IP42 | ||
用紙カット | ティアバー | マニュアル | ティアバー | |
ドット構成 dots/line | 384 | 384 | ||
印字密度 | 8ドット dot/mm | 203dpi | 203dpi | 8ドット 203dpi |
USB通信 | USB | USB TypeC | USB microB | USB |
Bluetooth通信 | Bluetooth | Bluetooth 5.0 (対象機種) | Bluetooth 5.0 | Bluetooth |
有線LAN通信 | - | - | - | - |
無線LAN通信 | - | 2.4/5GHz (対象機種) | - | - |
NFC | NFC | NFC | ||
寿命 | 50km | 50km |
和信(WASHIN)
WS-58ⅡK
この製品も58mmのロール紙対応の機種ですが、モバイルではなく卓上専用です。
印字速度は90mm/secなので遅くはないですが、速くもないという程度です。
SDKはiOS、Windows、Android用が用意されているので、これらのOSは対応済のようです。
USB接続はいずれのOSにも対応していますが、AndroidとWindowsはBluetoothでも接続可能です。
自動カッターは搭載されていないので、手で切ることになります。
和信 レシートプリンター WS-58ⅡK
卓上で使う58mm感熱紙レシートプリンターです。ずっしり感がありますが498gなのでさほど重くもないです。 ドライバはWindows、Android、Macに対応しています。 |
和信(WASHIN)
WS-DT325B
コンパクトタイプの卓上プリンターです。
レシートプリンタというよりは、ラベルプリンタです。業務用の入門機としては良いかなと思います。
80mm幅まで対応しているので、先述のJALのレシート程度の大きさまで対応しています。
感熱ラベルロール紙は指定がないので、Amazonなどで売られている様々な市販品で自由選択できます。
インターフェースはUSB2.0です。
バーコードはかなり広い範囲で対応しています。
和信 ラベルプリンター WS-DT325B
卓上で使う80mm幅まで対応できる感熱紙プリンターです。1.1kgあるので、少し押したくらいではグラつかない重量感があります。 印字速度は152mm/secなので速い方です。解像度は208dpiなのでさほど高くはないです。簡単なロゴくらいなら大丈夫だと思います。 ドライバはWindows、Macに両対応しています。 |
和信(WASHIN)
WS-D463B
幅118mmまでの連続紙、ギャップラベル紙、ブラックマーク紙、連続パンチ穴など様々なメディアに対応した感熱紙プリンタです。
152mm/secの印刷速度は早い方だと思います。
Windows、Mac、Android、iOSに対応しています。
SDKはWindows、Android、Mac用が用意されています。
インターフェイスはUSBとBluetoothです。
ラベル印刷用として、スタイリッシュで良いかなと思います。
和信 ラベルプリンター WS-D463B
118mm幅まで対応、伝票類の印刷にも使えるサーマルプリンターです。 |
MUNBYN
ITPP941
Amazonで6,000件以上の評価で、★4つ以上を獲得しているので人気のある商品だと思います。
かなり本気度の高い、業務用途でも使えるサーマルプリンタです。
メーカーによると700枚を継続的に印刷できるそうです。途中、放熱などのために一時停止はあるようです。
印刷速度は150mm/secなので速い方だと思います。
画像品質は203dpiです。
プリンタヘッドは日本のローム製品を採用しているようです。
MUNBYN サーマルプリンター P941
A6サイズまで対応しているので、クロネコヤマトの伝票、クリックポストの伝票などに対応しています。 ラベルに印刷してそのまま荷物に貼り付けることができます。 色々なラベルに対応できるので、用途の拡張性は高いと思います。 |
ITPP047
自動カッターが搭載されたレシートプリンタです。
印字速度が300mm/sec、超高速という感じです。長いレシートもストレスなく、短い物であれば瞬時に飛び出してきてくれる速さだと思います。
USB、LAN、Bluetoothに対応しています。RS-232Cのシリアルポートも備わっているようですので、古いタイプのレジなどにも使えるかもしれません。
1.73kgとそれなりに重いのですが、壁掛けもできるそうです。
自動カッター搭載機種の中では安そうですし、安い割には機能が充実している感じではないかと思います。
MUNBYN サーマルプリンター P047
80mm幅まで対応、印字速度300mm/secの最速級のサーマルプリンタです。 Bluetooth、USB、LAN接続に対応しています。 |
Deli
クリックポストやヤマト運輸のA6サイズ(A4用紙の4分の1)の伝票印刷に対応したサーマルプリンタです。
比較的お安いですし、高速印刷を動画で実証しているので買う価値はありそうです。
このブランドさんが、3年後や5年後も供給してくれるのかという点が心配ではありますが、期待したいところです。
耐用は30kmということなので、それなりにヘッドは使い続けられそうです。
Deli 感熱ラベルプリンター
日本郵便クリックポスト、Amazon、ヤマトサーマルシール対応のサーマルプリンタです。 業務用に対応できるレベル感です。印刷最大幅108mm、A6サイズまで対応しています。 |
機種の絞込
今回の用途としては、自動カッターが欲しいなと思ったので、予算を鑑みるとMUNBYNのレシートプリンターが最適なのかなと思いました。
印字速度が230mm/secの下位機種もありますが、価格的には2,000円くらいの差なので、300mm/secの方が良いかなと思って見ています。
ただし、レシートだけにしか使えなくて良いのか、という疑問もあります。
イベントでは初対面同士でのワークショップもあるので、名札として使うような場合にはラベルの方が良いなと思いました。
そうなると、どの機種が良いのか、また迷うところです。ラベルの場合は台紙の都合でオートカットは選べないと思いますので、そこはあきらめざるを得ません。
ラベルプリンタであるとしても、MUNBYNが価格的に優位ではあります。
GateKeeperに搭載後は….
例えばワークショップのグループ分けであるとか、座席の指定、参加証明などに使えるのではないかと考えています。
先述の飛行機(JAL)の場合、搭乗便、搭乗口、出発時刻など搭乗前に確認すべき内容と、座席番号が記載されています。
また『BOARDING GROUP 2』というのは搭乗順で『グループ2のお客様』と呼ばれたら搭乗できることを示しています。グループ分けが確認できる点が研修には良いなと思っています。
おわりに
今回は研修会等の受付で利用するレシートプリンタについて検討しました。
何が良いか決めきれなかったので持ち越しとなりましたが、検討すべき課題は『紙のみで自動カッター』か『紙もラベルも使う』かということが見えました。
いずれにしてもMUNBYNというメーカーがリーズナブルかなと思いました。
ただし、サポートという面で言うと東京に拠点がある和信も良いと思います。
印刷性能で言えば、KOGLEEのDeliという製品はレビュー数は少ないものの、動画でクリックポストなどの印刷を実証しているのでラベル印刷としては間違いない種類かなと思いました。
過去の研究では日本のbrother製品を使ってきましたが、日本のブランドもしっかり視野に入れながら、GateKeeperユーザー様が入手しやすい流通や価格を考えていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。