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安否確認システムの選び方 ~今日の課題~

★本日の課題★
安否確認システムの選び方について考える

 安否確認システムとは、安否を確認するためのシステムです。

 無料と有料、本格的なものと簡易的なもの、大規模組織と少人数組織など種類や用途は様々です。

 これを、どうやって選ぶと良いのか考えてみました。




チェック表をつくる

 この手のシステム選定には、やはり比較表をつくって『わたしはココを重視する』という点を見つけ出していくことが必要かと思います。

 安否確認システムなので『安否報告』『安否確認』ができて当然ですが、ほかに何を重視するのか、いまはわからなくてもチェック表をつくると見えてきます。

 下図は仮想の事例です。
 『ID数に応じた従量課金』は『なし』を高評価にして加点する方法があります。逆に加点まではいかないとしても『あり』を低評価として減点対象とする評価者も居るかもしれません。

 費用面だけではなく、安否確認システムは運用面も重要です。
 『当該システム以外の閲覧』が可能であるかどうか、これを絶対条件とした場合には、数十あるシステムがだいぶ絞られるかもしれません。

 チェック表は、このようにして使っていきます。




チェックの視点

 チェックの視点は大きく安否管理者側と安否報告者側にわかれます。

 雇用側と労働側、職員側と生徒側、その属性はいろいろあると思いますが、立場による視点の違いに気づくことは重要です。

 その上で、どちらの、どの視点を重視するかを考える必要があります。

 ユーザーインターフェイスが悪くて報告しづらいが、個人情報保護に優れたシステムがあるとします。
一方で、ユーザビリティは良いが個人情報保護については不安が残るシステムがあるとします。
 どちらにも優劣がありますが、プラスマイナスゼロであるとすれば、単純な点数評価はできません。

 この評価について、例えば『報告できなければ個人情報も何もないので、まずはユーザビリティでしょ』という評価をする組織があり、非常事態における個人情報管理については厳格性が低下したとしても、確実に安否が報告される方を選びました。

 自分たちの選定理由を持つことが重要です。




まずは費用から

 システム選定において、誰もがわかりやすい数字で示される費用について、早々に評価を済ませてしまうと良いです。

 とりあえず、ナンボかかるのかを知ります。

 費用対効果については、あとで再評価します。

 安否確認システムに係る費用ですが、システム自体の購入や利用に係る『本体費用』、それを使い始めるための準備に係る『初期費用』、使い続けるために受けるサポートやメンテナンス等の『保守費用』、ICTにはよくある『サーバ費用』や『端末費用』などがかかります。

 謳い文句で『月額4千円より』などと書かれている広告がありますが、これは本体費用だけの場合があります。専用サーバを借りると月額1万円くらいはかかるので本体費用よりも多くの周辺費用がかかることがあります。

 また、ユーザー数が増えると料金も上がるというのが多くのシステムです。サーバで保持するデータ容量が増えることや、短時間に処理しなければならない安否確認対象者が増えることへの対価として徴収されますが『1人あたり100円』と言われて安くも感じますが、1,000人で月額10万円、年120万円、かなりの額になります。

 廉価品ですと多用途安否確認システム『AmpiTa』が記念価格で月額換算1,000円の破格を出していますが、安いなりに高価品とは異なる部分があります。
 詳細は後述します。




初期費用に含まれるか?

 システムの『初期費用』については、個々に確認が必要です。

 おそらく、名簿を安否確認システムに登録するような作業は含まれていないと思いますが、含まれていればラクできますので、管理者にとってはありがたい費用です。

 多くの場合、運営会社が管理するサーバに、購入者の利用枠を設定し、ログインすれば管理ポータルが表示されるようにするような、個別設定のための費用として初期費用が計上されていると思います。

 初期費用が無料(タダ)の場合、数か月か数年の使用の中で回収しようと考えている場合もあるので、もしかすると月額費用が割高かもしれません。

 ICT専門のベンダーなどの場合、様々なシステムのためにスタッフを抱えているので、安否確認システム専任ではないにしても人件費を低くおさえて初期費用を低価格化する企業努力をしている場合もあるので、費用と体制については要チェックかもしれません。




保守費用

 これも提供者側の考え方による性質のものです。

 普通に使えることを買っているので、本体価格以外に支払わないという考え方の組織であれば保守費用が存在するだけで敬遠される場合もあります。

 何のための保守費用であるのかを確認することは重要です。

 その上で、納得のいく保守費用であれば計上しなければなりませんので、費用計画に含めて評価することになります。




本体費用

 そもそも、そのシステムに何円の価値があるかというのが本体費用です。

 自動車や腕時計でも同じです。
 タイヤが回って移動できる鉄箱というだけであれば自動車は一律100万円でもよいかもしれませんが、快適性であったり、作業車であれば機能性であったりといった面に価値を認めて1千万円を越える車両も売られています。

 安否確認システムにおいては、ある瞬間を切り取った利便性のような部分と、長期的な安定性や定常性といった『困った時に確実に使える』ということにも価値が生まれます。

 ある瞬間については、安否等報告者が使う画面が報告しやすい構成になっているかは重要です。
 これについてはカスタマイズ可能なものも多いので、どうにかなりやすい部分かもしれません。
 もう1つ、通信が輻輳状態で弱くなった通信網から、わずかに分けられた100KBにも満たない通信容量で安否が報告できるのかは重要です。

 通信については管理者側も同じです。
 輻輳状態でも連絡が取れるというメリットのために、安否確認システムを調達していると思います。




認証ありの場合

 ユーザーインターフェイスで意見が割れるのがログインに係る認証です。

 管理者側のシステムは個人情報が含まれるのでログイン認証は必要性があるかもしれませんが、安否等を報告する側にはどれだけの必要性があるでしょうか。

 平時利用されるサイトで検証しましたが、ログイン画面の表示に200KBかかると、ログイン後の画面表示にも同程度の通信容量を使っており、ダウンロード側だけで合計400KBくらい使いました。

 一方でログイン認証なしの場合、通信は1回目からいきなり安否等報告画面を開く事ができます。
 その画面で必要事項を入力して送信すれば終わります。

 下図は『AmpiTa』の登録フォームです。
 認証不要なので、ページを開く際の10KBほど、状況を入力して送信するときの10KBほど、その結果を受け取る際の10KBほどの通信で終わります。

 ブラウザで簡単に開く事ができるので成りすましができます。
 非常時の連絡用のページに、わざわざなりすまして妨害する人がどれだけ居るのかと考えると、性善説に立てば認証は要らないのではないかというのがAmpiTaの考え方です。

 災害時にデマも流れるくらい情報通信に関しては怪しいところもあるので、有名企業や攻撃を受けやすい企業においては認証があった方が良いのかもしれません。

 非常事態といっても地震などはごく短時間に膨大な量の通信がありますが、COVID-19のような長期的な災禍、あるいは被害時間がズレる台風などの場合は殺到というほどにはならないので、認証に費やす通信容量にも余裕があるかもしれません。




連絡画面は専用アプリ?

 安否等の連絡をするための画面について、いくつかの種類にわかれます。

 まず、専用アプリか汎用のブラウザ等を使用する方法かにわかれます。

 Apple StoreやGoogle Playで安否確認を検索すると、何社かが『ご契約いただくと発行』といった表現で、安否登録用のアプリを配信しています。

 専用アプリのメリットは、作り込みがしっかりしている点です。
 専用に開発されているだけあって、例えば写真の共有であるとか、特定の人への連絡であるといったことが容易にできるようになっています。

 一方で、プッシュ通知なども受け取れるように設計されているためは『バッテリ消耗』に関するご意見が出る事があります。
 平時であれば充電も容易ですが、非常時に使用するアプリが、非常時のスマホ電池を消費しすぎるようであれば、それを理由にアプリを停止してしまう人も居るかもしれないので危険です。

 専用アプリを使わないタイプ、ウェブブラウザから登録するタイプはこれらの逆を行っています。
 プッシュ通知は無いですし、画面の作り込みもさほど凝った感じにはなりません。

 その代わり、どんな情報端末でも連絡できるメリットがあります。




居合わせた他人のスマホ

 下図は『AmpiTa』のプロモーションページから拾ったものですが、居合わせた他人のスマホから安否連絡ができるという説明です。

 この機能は2013年にガラケーにも対応していたということで、AmpiTaのウリの1つです。

 個人認証しないシステムのため、他人のスマホに自身の個人認証情報が残る事はないですし、スマホから端末情報などを送ってしまう心配もありません。

 何よりも、借りている時間の最少化が期待できます。
 予め二次元コードを用意しておいき、スマホをかりたらすぐにカメラを起動してスキャン、ブラウザを開いて氏名や安否を入力して送信、不慣れでも1分前後で済む作業です。




管理者機能の優劣

 安否情報が集計できるのは、どの安否確認システムでも同じだと思います。

 違うとすれば災害伝言ダイヤル171でしょう。
 こちらは、集計機能は無く、伝言を聞いて自ら集計する必要があります。
 上限が20件ほどなので、組織で使うには難がありそうです。

 LINEやメールで安否を知らせる方法でも、手作業での集計が必要です。

 この点においては安否確認システムは、総務や人事などの業務を助けることにもつながるので、導入する『価値』はあると思います。

 管理者側が閲覧できる画面については、全データにアクセスできるというのはどのシステムでも同じです。
 部署別や権限別に閲覧範囲を絞れるのは、主に専用サーバを立てて管理する本格的なシステムの特権のようなものです。

 所属する部署については部員全員が相互に確認できるが、他部署は確認できない、という権限分け、セグメント分けが必要な場合には比較的高価なシステムを導入する必要があります。

 非常事態なので誰が見れても良いという場合や、見られても名簿と突合しなければ詳細はわからないという管理方法をとる場合などは、管理職全員が同じ画面を共有しても問題ないと思います。

 例えば学籍番号と安否だけが閲覧でき、その学籍番号から個人名を得るには別の突合ファイルが必要であるとします。学籍番号『S301048』であれば3年1組48番ということは学内では認識可能、その人が『安全』と連絡してきたとわかれば、毎日出欠確認をしている担任の先生はだれが無事なのかわかります。
 全体として報告者数が見れれば、全校生徒の数から未連絡者の数が推定できます。
 このような運用であれば全員が同じ情報量で対応し、部署別などに細分化しないという運用でも問題ないので、比較的安価なシステムを選択することができます。

 細かい設定ができるということはICTシステムとしては優れていると思いますが、安否確認システムとしてどうなのかという点については、それぞれの評価者の視点によることになります。




冗長性や強靭性は絶対的な欠格事由?

 安否確認システムが何らかの理由で破綻し、使えなくなったときに代替する手段がなければ、安否情報は闇へと消えてしまいます。
 災害が沈静化したのちに復元できても、新聞のようなものでタイムリーでなければ何の役にも立ちません。

 『もしも』ということを考えるべきである非常時対応アイテムですので、じっくり検討する必要があります。

 例えば『AmpiTa』はウェブブラウザがあれば、データを読む事は可能です。
 集計については難がありますが、とりあえず全件に目を通すことはできます。

 閲覧すらできないようなシステムが存在するとすれば、それは絶対的欠格事由として、選考から外すという組織もあると思います。
 この点についてはどこまで厳しく評価するかわかりませんが、ここだけで評価しても良いくらいの重みがある評価項目です。




出力と二次利用

 名簿などが出力できるのはどのシステムにも共通しています。

 評価をするにあたっては、その出力ファイルを何に活用するのか、二次利用の方法まで考えるべきです。

 印刷した一覧表を見るということであれば、どのシステムでも大差ないと思います。

 CSVファイルやExcelファイル(XLSX)などは、それらを表計算ソフト(Excel)で編集加工したいのか、別システムにインポートして活用したいのか、といった目的によってだいぶ変わります。

 変わり種としては『AmpiTa』がHTMLファイル出力に対応しています。
 このHTMLファイルは、表計算ソフトなどが使えなくてもブラウザで一覧表を表示させられるメリットがあります。
 一応、ネットで公開することも可能です。集計方法を上手くすれば個人情報を伴わず、安否を知らせることができます。

 安否確認システムは個人の安否だけでなく、例えば店舗や産業機械の安否確認にも応用できます。
 各店舗から『店内無事』『建物使用可』『明日から営業』などの情報を収集し、それをHTMLファイルで出力して会社のホームページに掲載すれば、何百店舗もあったとしても瞬時に集計結果を公表できますし、更新も容易です。
 ホームページ担当者や外部委託業者が被災して動けなくても、マネジャー級の人が随時更新できます。

 二次利用まで考えた評価が必要です。




平時利用

 平時利用や他の用途への利用も重要な評価項目です。

 安否確認にしか使えないシステムであれば、費用対効果は安否確認に絞られます。

 多用途であれば、費用が案分されます。

 例えば『AmpiTa』が推している『ARS』はAudience Response Systemの略称ですが、和訳すると聴衆応答システムです。
 授業中、挙手による意思表示をやめてスマホで投票できるシステムです。
 オンライン授業が増えたいま、需要は高まっていると思います。
 このARSを買う事なく、安否確認のオマケとして使うことができます。ARSは買うと数万円、あるいは月額数百円から数千円するので、安否確認システムと費用案分できるとすれば、千円分くらいはARSに持ってもらえると、安否確認システムが安く見えてきます。
 AmpiTaは記念特価で買えれば月額換算1千円なので、ARSよりも安いかもしれません。




無料の試用版

 試用版が無料で用意されているのは当然ですが、それが許可なく誰でも使えれば、売込を受けることなく静かに評価できるのでありがたいです。

 『AmpiTa』はVectorで無償提供されているので、登録などをせずに誰もが24時間、勝手にダウンロードして試用できます。

 しかも、デモ用アカウントも設定されているので、とりあえず200件くらい受信してみようかという『お試し』も導入直後から開始できます。




おわりに

 今回は安否確認システムの調達における比較・評価について検討してみました。

 一見するとチープなシステムでも、評価軸の置き方では高得点にもなりそうなことがわかりました。

 また、安否確認システムでは絶対的な欠格事項を定める事で、無用なシステムを導入していしまうリスクを回避できるかもしれないことが示唆されました。

 今後は、様々な製品のレビューも参考にしながら、チェック表を作り上げたいと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

解決

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