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BCP・災害対策

自立していない障害者の緊急保護 ~今日の課題~

 保護を求める障害者が居たとき、市民はどのような行動ができるのでしょうか。

 今回、対応の誤りがあったのではないかと不安になる事例に遭遇しました。




発端は交通事故

 人身事故となる交通事故が発生しました。

 119番通報、110番通報は済んでいるということで、負傷者の救護に専念しました。

 明らかな出血があり、それは頭部からであることが見てわかったのですが、出血という話題には触れず『起き上がらないように』『首を動かさないように』『救急車が向かっているから』などの声掛けをしながら、常に橈骨で脈をとりつつ、会話を続けました。




自宅への連絡を拒む

  • 私『病院に運んでもらって検査してもらいましょう』
  • 負傷者『入院するんですか?』
  • 私『少なくとも検査して、無事かどうか診断すると思う』
  • 負傷者『入院は困る』
  • 私『ご家族に連絡しましょう』
    私『自宅に誰かいますか?』
    私『電話番号を言ってくれたらこの場で電話をかけます』
  • 負傷者『家には誰も居ない』
    負傷者『電話番号は覚えていない』



ご自宅には….

 この『家には誰も居ない』の言い方が、額面通り受け取って良いのかわからない感じでした。

 その後も、入院はしたくないといった主旨のことを言い続けているので、小声で話しかけてみました。

  • 私『お宅に何か事情があるのであれば….』
  • 負傷者『障害を持った子供が家にいる』
  • 私『知的障害ですか?』
  • 負傷者『そう』
  • 私『保護が必要ですか?』
  • 負傷者『すぐではないが、長時間は1人で居られない』
    負傷者『見知らぬ人とは接することができない』
    負傷者『家族でないと難しい』
    負傷者『家族が戻るのは20時過ぎなので、それまでは待てない』
  • 私『では、警察と民生委員で対応してもらいましょう』
    私『あまり残り時間はないですね』
  • 負傷者『それで保護できるならば…..』



警察到着

 救急車より先にパトカーが到着しました。事故現場から数百メートル、見える場所に交番があるので当然だと思いますが。

 到着した警官、塩対応でした。障害者保護を訴えましたが、負傷者の氏名や住所などを聴くにとどまり、家庭内の様子などは確認しませんでした。

 そもそも、警察官は私が嫌いなようで『あんた、そこの家の人だろ』と言われたのが唯一の会話、これ以外はすべて無視でした。地元警察がこのような対応をするのは初めてではなく、大人のイジメが横行している地域なので仕方ないです。過去に名誉毀損だと言ったら『あなたに毀損される名誉はない』と警察官に言われました。残念。

 負傷者が自宅のカギを預けようとしましたが、これを拒否しました。

 現場ではなすすべ無し、という感じでした。




救急隊到着

 救急隊が到着し、負傷者を救急車に載せて搬送しました。

 この救急隊は人柄がよく、という感じではなかったです。
 負傷者が立ち上がるのはしんどいと言っていましたが、手を貸して立たせ、足がガクガクするといっても無理やり歩かせてストレッチャーまで行かせ、自力で乗るように促していました。

 結構な量の出血が後頭部からあったので、このような人を歩かせようという救急隊が居るものかと思いました。
 別な隊員はバックボードを用意していました。普通、そっちでしょうと思いましたが。

 このとき、警官が救急隊に対し、自宅に障害者が居ることを伝えたそうです。私はその様子を見ていませんが、伝えたのでしょう。

 のちに所轄警察署に確認したところ、この『伝えた』時点で警察の役目を終えて、あとは消防署の仕事であるとのことでした。




ゴールは保護

 このケースにおいて、しかるべき人に伝言することがゴールではなく、自宅に1人で居る知的障害者を保護することがゴールです。

 ちょっと買い物に出かけた母親、もう少しで夕飯の時間、いつもなら1人で居る時間帯ではないときに母親が帰ってこないということは、まぁまぁ危機的な状況ではないかと思います。

 他のご家族の帰宅は20時頃、現在17時半頃、あと2時間半を無事に過ごせるか心配です。




障害者虐待防止センター

 警察が対応するともしないとも言わない、少なくとも私からの訴えにはYes/Noも言わない無視の状態でした。

 仕方なく、障害者虐待防止センターに電話しました。

 ある意味、これが初動になったのですが、この初動が正しいかどうかがそもそもの不安要素です。

 障害者虐待防止センターの方が電話で、それは警察が対応する内容なので、警察に言ってくださいとのことでした。

 あくまで相談窓口であるので、今回のように事故に遭った人の家族が知的障害者であり、家に居るというだけでは障害者虐待防止センターの仕事にはならないということでした。




監護権はどこにあるのか

 まず、自宅に居る知的障害者は未成年ではないということで、保護者という考え方は外れます。

 普段、知的障害者である対象者を保護し、養育している親権者が交通事故で搬送され不在となるところから、少し流れが変わるようです。

 保護や監護、養護など適切な言葉がなにかも分かりませんが、障害者虐待防止センターの方とお話しする中では、明らかな自傷行為などをしていない限り警察しか家を訪ねることはできないので、警察に監護や保護の責任があるのではないか、とのことでした。

 もし、警察が監護や保護の責任を怠るようであれば、警察による虐待とみなして別の機関が動けるかもしれないが、簡単な話ではないということでした。

 2時間半のタイムリミットで対応できるようなレベルでは無いようなので、これについては平時に答えを出しておく必要がありそうです。

第三十章 遺棄の罪
(遺棄)
第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

(保護責任者遺棄等)
第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)
第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

刑法



2時間半はOK?

 交通事故の所轄警察署に問い合わせたときに、20時に家族が帰宅するのだから安全だということも言っていました。

 何を根拠に安全なのか問うてみましたが『何が言いたいのか』と返されて、終わりでした。

 おそらく、正しい仕事をした警官に対してクレームをつけるなということなのかなと勝手に考えましたが、こちらの考えるゴールは対象者の確実な安全、できれば保護することなので、根拠のない安全宣言には不安がありました。

 警察いわく、搬送した救急隊が、負傷者の家族が20時に戻るということを言っていたとのことでした。
 救急隊がそれで安全だと言ったのか聞きましたが、そこは茶を濁された感じでしたので、消防署に問い合わせました。




個人情報保護の壁

 消防署に搬送時間、搬送者氏名、その他の情報を伝えて、保護に向かったのかどうか問い合わせました。

  • 消防署員『搬送があったかどうかが個人情報なので、何も答えられない』
  • 私『保護されていれば良いので、個人情報は教えてくれなくて良い』
  • 消防署員『保護すべきことがあったかどうかどうかも答えられない』
  • 消防署員『搬送があったかどうか、保護すべきことがあったかどうか、保護したかどうかはこちらで確認するが、一切教えられない』
  • 私『では、行政の障害者虐待防止センターに連絡を入れるのはどうか?』
  • 消防署員『電話番号を教えてくれれば、必要と判断した場合は電話する』

ということで、ひとまず行政の障害者虐待防止センターでの対応が期待できることになりました。

 少し心配なのが、2時間半は1人で居られるという判断をしたのが警察なのか、救急隊なのかです。
 もし救急隊が安全だと判断していた場合は、放置することに問題がないとの判断なので行政の障害者虐待防止センターには連絡しない可能性があります。




110番

 行政の障害者虐待防止センターに再び状況報告をしました。

 この事案を覚知した私が110番通報すれば、警察は対応せざるを得ないということで、通報しました。

 電話口で『警察からの連絡や、警察官との接触は必要ですか』と聴かれたので、行政の障害者虐待防止センターと連携しているので、警察が対応しない場合はその旨を、対応する場合はその旨を、できるだけ早く連絡して欲しいと伝えました。

 特に、警察が対応しないと判断した場合、行政の障害者虐待防止センターが動くことになるので、初動遅れが最短化されるように依頼しました。




連絡来ず

 1時間経過しても警察から連絡は来ませんでした。

 警察署に問い合わせると『受けたのは私ではないので連絡するという話は聞いていない』とのことでした。

 こちらから『警察にお願いした』とは言いましたが、『私がお願いされた訳ではない』という回答で終わりました。

 『保護できましたか?』と聴くと、『対応はしているが、家に行ったかどうかは言わない』ということで、対応の内容が対象者との接触なのか、対象者のことを想像しただけなのか、何もわかりません。

 一応『保護されていればそれで良い』と言いましたが、警察としては保護されているかどうかではなく、対応したかどうかで判断するようなことを言われました。




交通と保護は別組織

 とある人に、警察への連絡方法について相談しました。

 今回、事故現場に来たのは地域の交番の人なので、交通事故も障害者虐待も専門外である可能性があるとのことでした。

 交通事故については初めてということはないだろうということで、負傷者の氏名などを確認する、目撃者を見つけるという仕事は完璧にこなしたのであろう、とのことでした。

 知的障害者が1人で家にいることが危機的状況であることが理解できない可能性は否定できず、警察内のしかるべき部署につなぐということを知らなかったのであれば、仕方ないというか、悪意はないということでした。




189

 緊急通報『189』番はこどもの虐待ダイヤルです。

 今回は成人している知的障害者なので、ここは通報先ではありません。

 ただし、このようなケースの対応力が高いと思ったので、問い合わせてみました。

 開口一番『現場に駆け付けた警察官に言えば、そこから地域を担当する警察官が動いて保護されるので大丈夫』とのことでした。

 地元警察は、救急隊に伝えたので、それで完結しているという見解を示していると伝えると、そのような対応は無いはずだが、事実としてあったのであれば、保護されていない可能性があるということでした。

 18歳以下が対象のダイヤルなので直接対応はできないそうですが、このようなケースが存在することを地域を担当する児童相談所、市役所には伝えておくとのことでした。




ゴールできた?

 今回のケースでは、知的障害者である対象者が、保護すべき状態であったとすれば保護されたいるかどうかが重要でしたが、その確認はできずに終わりました。

 おそらく、消防署と障害者虐待防止センターの連携により、安全が確保されていると思います。

 地元警察の『対応』という内容も、プロとして保護すべきは保護してくれていると信じます。




エゴか?

 警察、消防、障害者虐待防止センターなど行政機関が適切な対応をしていた場合、色々なところに通報したり問い合わせた私が、その結果を知りたいだけのエゴで『課題が残った』と思っているだけかもしれません。

 知的障害者である対象者が保護されてもされなくても、私の生命や財産には何の影響もないので、確かに私のエゴかもしれません。

 ゴールに到達できたか『知りたい』だけであれば、どこかの機関に委ねた時点で国民は撤退すべき、というのが現状かもしれません。




顔の見える関係

 地域が障害者であるとか高齢者であるとかカテゴライズするのではなく、フラットにお付き合いできれば良いなと思いました。

 その上で、この人は何ができず困っている人なのか、何を得意としている人なのか、わかりあえる方法があると良いなと思いました。

 知的障害者の場合、顔見知りでないと近づかれるだけでパニックになることもあるので、有事にどうこうではなく、平時から顔見知りになることが重要だなと思いました。

 今週は津波一斉避難訓練が行われましたが、両隣の家が聴こえに課題のある住人が居るので、警報が出たときには家まで行って声を掛けなければと思っていたところです。

 おそらく医療的ケア児が近所には居るだろうと思っていますが、なかなか表には出てこないので、災害時などに私宅がウエルカムであることを伝える手段が欲しいなと常々思っています。

 地域自治の在り方について、再考する出来事でした。




おわりに

 今回は交通事故の負傷者救護をしたところから、知的障害者が1人で家に居るというケースに遭遇し、その対応方法について課題が残るという結果になりました。

 行政機関の仕事を100%信じてしまえばそれで終わりですが、保護すべき人が居ても保護されていなかったらどうしようかという個人的な妄想が悪さしたケースになりました。

 国家権力を持つある人々の迷惑そうな様子が、印象に残ってしまいました。今夜はうなされそうです。
 あの迷惑そうな顔を教訓に、迷惑がられないように努めたいと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

継続

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