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BCP・災害対策

『自助を考える:兵糧自衛』 -今日の課題-

★本日の課題★
自助としての食料について考える




兵糧攻め

有力な戦術

 私は中高生の頃、よく『信長の野望』というシミュレーションゲームで遊んでいました。
 19歳で第1種電気工事士国家試験を受験した際も、実技試験から帰る道中で我慢していたゲーム機と信長の野望を買って帰りました。
 このゲームの有用な戦術として『兵糧攻め』があります。

 戦国時代は衛生状態も良くなかったので栄養が摂れなければ疫病も流行り、益々戦意を喪失する事になったようです。



兵糧攻めに遭う側

 前述の『信長の野望』では兵糧攻めされないように富国強兵という戦略をとります。

 食糧を蓄え、また農作物が収穫できる領土づくりをします。

 兵糧攻めに遭えば死者が出て、それは自分や家族かもしれないという戦国時代は相当な精神的圧迫があったと思いますが、一方でカリスマ性のある領主が居たからこそ耐えられたのだと思います。

 個々が自立した生活を送る現代では、誰かに兵糧攻めにされることもありませんが、兵糧攻めのような状況になったとき、どのような対処が取れるかが課題となります。



一斉休校で兵糧攻め

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い一斉休校となった2020年3月~5月頃の間、人知れず兵糧攻めのような状態に追いやられている家庭が頻出しました。

 世間では給食用の食材や牛乳の廃棄に対する補償をどうするのかと議論されていましが、実は生活困窮家庭では給食が無い事による食費負担増に加え、各種事業所の休業などにより世帯収入も減少する二重苦により、育ち盛りの子供が1日1食という過酷な状況になっていました。

 育ち盛りの子供が居る家庭の保護者もまた、空腹に耐えられる訳ではなく、精一杯働いて1日1食しか食べられなければ、働き続ける事も困難になりかねません。

 こうした状況もあり、厚生労働省では子ども食堂などへの支援を続けられるよう自治体へ事務連絡を出しています。

厚生労働省: 新型コロナウイルス感染症対策に伴う子ども食堂とフードバンクとの協力について, 事務連絡, 2020年3月13日

 全国的にもコロナ自粛期間中の生活困窮家庭の食状況を危惧し手を差し伸べる団体が多くあるようです。

西日本新聞: コロナ自粛期間中をサポート、生活困窮家庭に食品を届ける全国の『こども宅食』団体が続々支援開始, 2020年5月6日

日本テレビ: 生活困窮家庭の子どもに食事を!こども食堂の代わりに食料配布, 2020年5月15日

日経BP ひとまち結び: 新型コロナで一斉休校、給食の未利用食品を有効活用, 2020年5月20日



現物支給は良い手法

 子ども食堂をはじめ『食料配布』を実践している活動は、非常に良い循環を生み出していると思います。

 何よりもまず、困っている人の胃袋が満たされる事は、何事にも代えがたいものです。

 以前、橋下徹さんが大阪市長であった2012年頃に、生活保護の現金支給をやめ、現物支給にすると発言して話題になりました。
 生活保護は衣食住に充てるべきであって、娯楽や嗜好に偏って使われるべきではないという考えに基づくことらしいです。
 確かに、食費であると想定して市が給付した保護費が、食費を削ってギャンブルに回されるとすれば、最初から食費は要らなかったという事になるので、そういう人には現物も要らないので取りに来ない、といった論理は納得できる気がします。

 現物支給は不正受給を減らす目的もありますが、保護世帯全員に適正に衣食住が確保されることも狙いの内にあるようです。

 テレビで『ヘドロ芸人』として出ている方も、芸人としての仕事が少ないにも関わらず、自分だけうなぎ弁当を買ってきて、子供たちが唖然とするシーンが放映されましたが、お父さんが現金を持って子供に現物が行き届かないという事があるのならば、現物支給には深い意味があると思います。

 現金支給に反対では無いですが、ふるさと納税など地域経済活性化の施策も多くありますので現物支給を併用、特に食品などはどの地域でも提供があると思いますので現物支給にしてみても良いのではないかと思います。



貧乏大学生も兵糧攻め

 ここまで子どもの空腹を取り上げてきましたが、大学生になっても空腹と隣り合わせな人が居ます。

 今日のテーマは自助ですので、どうすれば兵糧攻めに遭わないのか検討します。

 私が貧乏学生で一人暮らしをしていたときの月の食費は8千円が目標でした。
 白米が10kgで3千円くらい、残り5千円がおかず代でした。

 100円/100g未満の鶏肉が主な食材、ジャガイモ・人参・玉ねぎがマストアイテムという感じでした。
 1回の調理で野菜が100~150円分、鶏肉も100~150円分、これで2~3食はつなぐ予算でした。仮に1回の調理が250円で3食とすると、5,000円で20回調理、60食分のおかずができる事になります。

 1カ月は30日、1日3食で90食なので、前述の計算では30食不足します。仕方が無いので、おかず無しで食事します。
 おかず無しのときの小さな贅沢はヒガシマルのうどんスープを掛けて食べるお茶漬けです。気持ち、お腹が膨れます。

 こんな食生活でしたが9~18時まで大学、21時~6時までバイトという生活をどうにかやってのけました。

 同級生のS君は1袋10円のモヤシを食べて生き延びていたようですが、栄養失調で病院送りになっていました。



高齢世帯の貧困と兵糧攻め

 高齢世帯でも貧困と隣り合わせであり、明日の食事にも困っている人が居ます。

 明日は我が身とまでは迫っていませんが、自分が高齢者になったとき、食事に困る人にならないようにするためにはどうすべきでしょうか。

 1つ大きなカギは調理能力です。

 スーパーで食材を見て、予算内で何が作れるのかを判断できる能力が必要になると思います。

 もう少し大掛かりなことを考えると、物価の安い地域に住むことです。

 例えば、農業地域に住んで、出荷できない野菜を貰って生活すれば食事に困るほどの窮地には立たないと思います。

 とはいえ、ギブアンドテイク、何か返さなければなりませんので、返すことができる農家さんには無さそうなスキルを磨いておく必要があります。




災害時の自助としての食糧

台風21号

 2018年9月に被災した台風21号では、どのような食事をすればよかったのか、実際には何を食べたのかを記事にまとめています。

AmpiTa: 停電時に生き抜くための食事

 熱源を最小限しか使わない方法で、かつ冷蔵庫などにありそうな食材で作れるものがあると良かったです。

 そのために備蓄しておくと良かったのがルクルーゼのホーロー鍋、カセットガスコンロ、作り置き調理のレシピ本です。



自助=自費

 自助として食料を備蓄することは良いことだと思いますが、その費用負担者は自分になります。

 ここが悩ましいところ、大きな課題点です。

 公助として避難所で出される非常食や弁当は、税で調達されており無料で提供されます。タダです。

 納税しているのだから、弁当は貰える権利があると思って食事だけ貰いに避難所に行っても、自宅避難者の分は用意されていない場合があります。

 せっかく避難所の負担を軽減しようと自宅避難(待機)すると損をするという公助の制度が、自助をしている方々の士気を萎えさせます。



ローリングストックできれば経済的

 もし、自助のための備蓄品をローリングストックできれば、備蓄費用は最小化できます。

 例えば、お気に入りのカップ麺があり、月に2~3個は食べるとします。
 それを常に箱買いし、常に未開封の箱が1つあれば、最低12個の備蓄となります。
 その備蓄は3~4カ月ほどで入れ替わりますので賞味期限に追われることはなく新鮮な備蓄が配備されます。

 カップ麺12個、4人家族でも3食分を確保できますので発災から24時間の救援物資も届かくフェーズはしのげることになります。



日本人にはコメがある

 日本の多くの家庭にお米と炊飯器があります。

 煮炊きができる熱源と調理器具もあります。

 台風のように、ある程度の予想ができる災害においては炊飯器で事前に炊いておくことで、食料を自給できます。

 震災のように突発的な災害では炊飯器を使う事は難しいですが、調理器具があれば炊飯はできなくはないです。

 飯盒炊爨のように『はじめチョロチョロ中パッパ』『赤子泣いても蓋とるな』など忠実に守ればある程度のクォリティで炊飯ができます。
 ガスコンロと鍋があれば、炊飯はできます。

1.米2合は、洗って水につけておきます(夏30分、冬60分が目安)。

2.鍋に洗った米と容量で2割増しの水を入れ、蓋をして中火にかけます。コシがあって粘りのあるおいしいご飯を炊くためには、約10分程度で沸騰するような火加減が決め手になります。

3.沸騰したら火加減を弱めて10分から15分、火を消して15分蒸らして出来上がりです。蒸らしが終わったら、杓文字で釜返しをしてご飯をほぐします。

エネルギー・文化研究所: コンロでご飯を炊いてみませんか。

 リゾットも生米から調理をしますので、レシピを身に付けていれば、冷蔵庫に残った材料を生かした調理ができると思います。



貯湯槽

 エコキュートやエネファームという商品名はCMなどで耳にしているかもしれませんが、あの商品には隠れた防災力があります。

 それは『貯湯槽』です。

 お湯を貯める機能があるので、タンクには浴槽1~2杯分の湯があります。

 電力会社やガス会社からは『飲用ではない』と怒られるのですが、生きるか死ぬかの瀬戸際であれば、飲みます。

 機種にもよりますが、側面カバーを外して、コックをひねれば落差でお湯が出てきます。

 設計上は、バケツで受けるようになっているので、ペットボトルなどの容器に受けるのはやや難しいで、鍋など調理器具で受けた方が良いです。

 水ではなくお湯なので、ヤケドに注意です。



備蓄量

 白米は1カ月分とは言わずとも、半月分くらいはローリングストックも意識して在庫すれば、餓死するほどの事にはならないと思います。

 その他の食材については、最低2日分、できれば1週間~10日分の備蓄があると良いのではないかと考えています。

 プッシュ型の救援物資は概ね1~2日で届きます。翌日には市役所に届き、同日か翌日には避難所などで配布が始まると思いますので、トータル2~3日を見込むと、市民全員分の食料が用意されると思います。
 この期間を最低限と見た場合、冷蔵庫等にある食材と備蓄食糧を合わせて3日分の食を用意できれば生き延びられるだろうと感がています。

 1週間というのは、大きく2つの考え方があります。

 1つは商店再開です。
 ある程度の規模のまでの災害であれば発災3日目には復旧作業が本格化し、1週間ほどで仮設店舗での商店再開が期待できます。

 もう1つは南海トラフ地震のような未曽有の広範囲被災です。
 これまでの災害では、全国から救援物資が寄せられ、物流にも十分なリソースを割くことができましたが、南海トラフでは非常に広範囲で被災するため『被災地』が多いわりに、被災していないサポート側が少なく、救援物資の到着は遅くなると考えられます。
 それを見込むと1週間~10日、何か食べる物が無いと、長い行列に並んで1日1食ということも考えられます。




備蓄食糧

白米・生米

 白米はローリングストックとして欠かせませんが、少量の真空パックを買って『災害備蓄』としてどこかに保管しておくのも良いと思います。

あかふじ いつものお米10kg
キッザニア甲子園のアクティビティで『精米』をすると貰える『あかふじ』です。10kg袋はローリングストックとして使うと良いですが、5合パックなど小分けの真空パック商品などもあるので、非常持出袋に入れておいても良いなと思います。


白米・パック御飯

 レンチンのパック御飯ですが、そのままでも食べられます。

 一膳分になっているので便利です。

 柔らかさなど家族によって需要が異なるのであれば、その人用に違う種類のパック御飯を備蓄しておくと良いです。

パックご飯 新潟県産こしひかり 200g×20個
Amazonブランドのパック御飯です。どのブランドもある程度は備蓄できる賞味期限がありますが、こちらもローリングストックにすることをお薦めします。


飲用水

 調理に欠かせない『水』です。

 もちろん、そのまま飲むのにも使いますので、1~2ケースあると良いです。

 約5年の保存期間の物であれば、4~5年に1回の買い替えで済むので、さほど大きな負担にはなりません。

 空になったペットボトルは、給水車で水を貰う時の容器として使えますので、キャップも大事に保存します。

サントリー 防災備蓄用 南アルプスの天然水
備蓄用のペットボトルの水です。500mLのパーソナルなペットボトルと、2Lのペットボトルがあります。両方、それぞれに有用です。


レトルトカレー

 日本独特の文化で広がったカレー、そのレトルト食品は常用されている家庭も多いと思いますが、非常用もあります。

 味は好みが分かれますので、どのブランドが好きかどうかで分けて備蓄すると良いと思います。

永谷園 あたためなくてもおいしいカレー
温めなくても食べられるレトルトカレーです。味は個人の好みなので、発災後に口に合わなかったという事にならないように、平時に試食しておくと良いです。
江崎グリコ 常備用 カレー職人
グリコの『カレー職人』の長期保存版です。だいたい1人前100円くらいなのでリーズナブルです。ウチにも備蓄があります。


ふりかけ

 これも日本独特の文化だと思いますが、必需品です。

 昔は病院食の薄味に耐えられないからと入院時必須アイテムでもありましたが、最近の病院給食はおいしくなっているのと、減塩志向ですので、病院の売店では見かけなくなってきています。

 災害備蓄として、ふりかけは不可欠です。



缶詰

 これも常套手段です。

 ローリングストックに向いているので、ツナ缶やコーン缶だけでなく、年1回のペースで十分ですので変わり種の缶詰をつかった料理を試行し、非常時の献立に役立てていくと良いと思います。

 味の濃い缶詰を調味料代わりにして野菜と炒めるといった方法もあります。

 キャビアはどのようにして食べると美味しいのか知りませんが、あれも缶詰で売っています。



菓子

 発災後、自宅避難とはいえストレスが掛かります。

 会社や学校に行かず、テレビも映らない中で家族がじっと家にいるような状況が何日も続くのは、あまり経験することではありません。

 気を紛らわせる意味も込めて、菓子類があると良いです。

 また、雪山遭難から助かった人が『チョコレートを食べた』と言うセリフは何度か耳にしましたが、非常食としてのチョコは優秀だと思います。

 スナック菓子でもクッキーでも、賞味期限を見ながらときどき入れ替える、菓子の備蓄も有意義です。




 最初は貧困からの食糧難から考え始めましたが、自助というとやはり災害時の身の守り方も外せず、話題がそちらに行きました。

 私宅にはある程度の備蓄食がありますが、まだ十分とは言えません。

 近所の方々に分けてあげるような事は考えていませんが、お世話になった方が苦しんでいるのを知ったときに、どのような行動に出るのかわかりませんので、色々な面で備蓄を考えたいと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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