★今日の課題★
医療従事者が医工連携を推進するために院内でのコンセンサスを得る
臨床家
医療従事者
医療機関に勤める医療従事者は一般的に診療業務にあたる目的で雇い・雇われています。
医学系大学・養成校を卒業し、医療免許を取得し、その免許がなければできない仕事をする、というのが一般的です。
目的外・想定外
雇う側からすれば、賃金を支払って業務を命じている相手が、その業務外に精を出すことについて、許容できることと、できないことがあると思います。
特にチームとして戦力が欠けることは、医療では許されない場面も多くありますので、仕事に穴は開けられません。
医療従事者として、臨床家として、果たすべき役割は果たさなければなりません。
ストレスが原石
ある病院の院長から『離職防止に役立つなら良い』と医工連携を認めて頂いたことがあります。
別の病院の看護部長からは『給与と人事以外は彼に言って良い』と通達を出してもらい、数百人いる看護師さんから様々な意見を頂きました。
看護師さんらの愚痴を聞いて回り、その中に医工連携として価値ある話題が潜在している可能性があると考え、意見を聴いて回る仕事をしました。
愚痴の中には医工連携で解決すべきではないこともあります。
解決すべき話題があったとき、その解決に関わることがストレス解消になる人も居ます。
解決されることでストレスの原因が1つ減るという人も居ます。
医療・医学への貢献
医療・医学は独占するものではなく、広く社会に共有されるべきものだという基本的な考え方があります。
医療技術が特許にならないのも、そうした背景があります。
医療従事者が課題に気づき、解決策を求めて企業と連携し、場合によっては解決策を得ることは、医療や医学の発展や安全につながることもあります。
医工連携に参画する意義は、このような視点もあります。
そんな法律ある?
医工連携に協力しなさいという法律があるかと聞かれれば、あります。
医療機器促進法(国民が受ける医療の質向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律)です。
罰則がある法律ではなく、国民のため、医療の質向上のため、関係者は協力していきましょうという国の方針が掲げられたようなものだと理解しています。
医工連携は、やりたくない人が強要されてやるようなものでもありませんが、やりたいと思った人が、その目的が私腹を肥やすことや自己満足ではなく、医療の質向上のために活動するならば応援してあげようという、前向きな応援制度であると捉えています。
国民が受ける医療の質向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律
厚生労働省: 『国民が受ける医療の質向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関す基本計画』を閣議決定, 2015年5月31日
厚生労働省: 国民が受ける医療の質向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する協議のためのワーキンググループ
雇われながら医工連携
時間外チャレンジ
医療機関に臨床家として雇われながらも医工連携をするには、医工連携を認めている医療機関に就職するか、就業時間外で関わるかの選択になります。
手っ取り早いのが就業時間外でのチャレンジです。
サッカーやテニスをするように、ライフワークとして活動する分にはおとがめはないと思います。
兼業・副業・複業には注意
活動している時間に応じて対価を得る場合は就業規定に注意が必要です。
成果物に対してロイヤルティを貰う場合は、その商品を売るという行為に直接時間を割く訳では無いので、労災が起こる事はあり得ないと思いますのでさほど心配がないのかと思いますが、開発過程では移動中に事故に遭うかもしれませんし、実験中に有毒ガスが出て救急搬送されるかもしれません。
就業規則をよく読んでおくことが大切です。
病院からの許可は2通り
医療従事者の医工連携をお手伝いしていると出てくるのが、自院での許可を貰えるかどうかという相談です。
この許可には2種類あります。
ハードルが低い方の許可は『医工連携の活動をしても良いですよ』というものです。基本的に勤務時間外であれば活動を許しますという内容です。
時間外だから勝手だろうと思う人も居られますが、医工連携の場合は勤務上で経験する事が役立つこともあり、また所属機関名を見て信用される部分もあるので、この許可は必要です。
ハードルの高い方は勤務中でも活動して良いというものです
私が所属していた国立循環器病研究センターでは病院・研究所ともう1つ『研究開発基盤センター』という組織を設けて、医工連携を推進していました。元々、研究所併設の国立高度医療研究機関なので医工連携は推進されていましたが、独立行政法人化後も活発になされていました。
自院にある有用な技術やアイディアを全国に、世界に広げるためには事業化が有用だと考えた時、医工連携は便利なツールとなります。
そうした考え方で、医療機関から『勤務時間の5%程度までなら』といった制限付きで許容される場合があります。
研究と似て非なる
医工連携は一般的に研究開発が伴いますが、一般的な医学研究とは異なる場合もあります。
既存商品を『もっと安く』という開発では、臨床評価は行われても、臨床で探求する事は少ないです。
その開発が終わった時、医学的に進歩があるかと言われれば、無いかもしれません。
ただし、買いやすい価格になっているというゴールが、間接的には医療に貢献するかもしれません。
結論は?
成否拮抗
私がコンサルして、100%成功かと言われれば、そうではありません。
院内規定を根本から見直すような場合、外部の者が1人でできることではありませんし、依頼者も医工連携を理由に居づらくなることは求めていませんので、そういう場合は他の手段を提案します。
上手くいった事例はいくつもあります。
毎回同じ手段ではなく、ケース・バイ・ケースです。
ワーク・ライフ・バランス
院内で敵を作らずに医工連携をするには、バランスが大切だなと実感しています。
本来の雇用目的外の仕事ですので、まずは本業はぬかりなく働いてもらいます。
その上で、趣味が高じたという程度で医工連携に関わってもらいます。
中には、職域を超えてしまうこともあるので、他の職種に協力してもらう場合もあるので、普段から不評では誰も協力してもらえません。
私自身は人間関係を構築した上で、普段は看護師さんらに業務上でもプライベート的な事でも協力した上で、こちらが困った時に相談に行っていました。だいたい、協力してもらえました。
臨床工学技士相談中
現在、ご相談頂いているケースが複数あります。
院内コンセンサスを得るためには、何が障害になるのか、それは無理やり取り除いて大丈夫か、慎重に判断しています。
最終的には、医療従事者の考案した物が世に広まり、皆の課題を解決できれば良いと考えているので、『プランB』も懐に隠し持ちながら対応しています。
医工連携支援関連のガイド本
サクセス双六
医工連携とは何か、自社に何が足りないのか、見落としは無いかなど、すごろくをするだけでわかります。
入門書として、秀逸な仕上がりだと思います。
医工連携による医療機器事業化ガイドブック
経済産業省: 医工連携による医療機器事業化ガイドブック(2020年3月版)
経済産業省: 医工連携による医療機器事業化ガイドブック(2015年3月版)
医療機器開発ケーススタディー
医療機器開発支援ハンドブック
医工連携が推進される背景から始まり、それを支援する環境、そして個別の施策が紹介されています。
内閣官房(健康・医療戦略室)・文部科学省・厚生労働省・経済産業省: 医療機器開発支援ハンドブック(令和2年3月)
内閣官房(健康・医療戦略室)・文部科学省・厚生労働省・経済産業省: 医療機器開発支援ハンドブック(平成31年3月)
知財戦略関連のガイド本
医療機器開発における知財対策ガイドブック
知的財産を守るためにどのような書面が必要になるのかということをわかりやすく解説しています。
AMED: 医療機器開発における知財対策ガイドブック~中小・ベンチャー企業と医療機関のwin-winの医工連携に向けて~
[医師会編集]事例から学ぶ医工連携の知的財産
医師会が編集した知財ガイドブックです。
特徴的なのが話題提供の順番です。
最初に『知財を生み出そう』というタイトルで第1章が始まり『本当にニーズはあるか?』といった知財の質を重視した内容から始まります。
知財化できる情報であるという前提ではなく、知財化する価値があるのかをイラスト付きで説明しています。
経済産業省関東経済産業局・公益社団法人日本医師会: 事例から学ぶ医工連携の知的財産
臨床工学技士のための発明と知的財産に関するガイドブック
臨床工学技士という少しニッチな業種に絞ったガイドブックです。
知的財産とは何か、という事に触れる事が少ない臨床工学技士が、医工連携に参画する上で知っておくべき知識を紹介しています。
経済産業省東北経済産業局広域連携会議: 臨床工学技士のための発明と知的財産に関するガイドブック(2019年3月)
医工連携は『非臨床』の活動であり、自院に通う患者に直接のメリットが出ることも少ない活動です。
しかし、医療従事者にしか知り得ない事がたくさんあるので、医療従事者が情報発信しなければ開発すら行われない物も多くあります。
特に、医療機器系は免許が無ければ操作できないので、医療機器メーカーの人でもユーザーにはなれません。ここが自動車や家電の開発との大きな違いです。
医療従事者が医療機器開発に協力しましょうという制度もありますので、もっとプレイヤーが増える事を願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。